PRECISION FORMERの開発について

2020年8月に独自開発した小型成型機において「省・小・精」のものづくりに求められる機能を大幅に向上させPRECISION FORMERとして販売を開始しました。開発の意図や、こだわりポイント、PRECISION FORMERの未来について、開発責任者 加藤光利に語ってもらいました。

新製品AE-M3/M10が持つ特徴や狙いについて

当製品は開発当初より小型にこだわってきました。圧倒的なスペース生産性に加え、金型を含めたスピーディーな段取り替えを実現し、「欲しい時に 欲しい物を、欲しい所でつくる」という新しいものづくりのプロセスを提案してきました。AE-M3/M10では小型化の思想の下、より高い品質で効率的な生産を実現するための改良を進めました。

一般に小型の部品になればなるほどコールド仕様でのランナー比率は大きくなり材料コストが上昇します。ランナー比率が大きいことは冷却時間の点でも不利になります。当社の成形機は小型マイクロプローブを標準で搭載しており、初期投資なしでランナーレスを実現しています。AE-M3/M10では、その基本コンセプトを継承した上で、型開量を大きくし、部品の対応力を高めると共に、セミホットランナーによる多数個取りにも対応しました。

これまで、当社の成形機は、場所をとらず簡単に扱えるということで材料開発や少量生産といった比較的特殊な用途にお使いいただくことが多かったのですが、AE-M3/M10は、少量生産はもちろん大量生産やマスカスタマイゼーションにおいても最適な生産プロセスを実現しています。

小型サイズの実現を可能にした技術や、前モデルとの違いなどについて

小型化を実現している重要な要素技術としてスクリュのフラット化がありますが、今回そのスクリュ構造や制御方法を見直すことで可塑化性能やメンテナンス性を高めています。また、装置を構成している部品ひとつひとつの加工精度を精密金型以上につくりこみ装置全体の精度を上げています。これによって非常に高精度で安定した成形を実現しました。さらに、お客様のニーズに合わせたプランジャーや樹脂供給機構などのカスタマイズにも対応していきます。

スーパーエンプラや各種複合材など幅広い材料への対応について

材料への対応力というのもフラットスクリュを使った私たちの可塑化システムの大きな特徴です。小さく、薄い私達のフラットスクリュは、熱を伝達する効率がよく、また非常に高いレスポンス性能を持っています。したがってスーパーエンプラなどの高温を必要とする樹脂でもエネルギーを抑えながら成形することができます。そして、可塑化時間が短くスクリュ内での材料の滞留時間が短いため熱の影響が受けにくく、材料劣化を防ぐことができます。

カタログには「スピーディーな段取り切替え」とありますが、その仕組みについて

近年、生産現場での課題のひとつに少量生産品が増えている事があります。Precision Formerは少量生産から大量生産まで柔軟な生産に効率的に対応することができます。その理由が金型の取り回しの良さからくる段取り替えのしやすさです。AE-M3/M10は、装置が小さく使用する金型も小型です。従来の大きな金型に比べ取り回しが圧倒的に容易なことは想像いただけると思います。そして金型の小型化を活かすカセット機構を採用しています。

さらに、スクリュ構造がシンプルなため樹脂の排出が速く材料交換の手間もわずかとなっています。

金型の設計・製造受託について

質の高い部品は、質の高い金型からのみ生まれます。当社は、もともと金型メーカーとしてスタートしています。精密な金型を作ることが会社のバックボーンにあり、私達の基礎技術でもあります。

お客様には、単に射出成型機本体を販売するだけでなく、より高品質な部品を効率的に成形して頂くためのご支援を、金型含めたトータルソリューションとしてお届けしたい、と考えております。

Precision Formerの今後の発展、技術の未来について

Precision Formerは、AE-M3/M10に留まらず、今後、そのラインアップを拡げていく計画です。その際も、Precision Formerの特徴である「小型化を究める」には 常にこだわっていきたいと考えています。 単に従来の成形機を置き換えるにとどまらず、小型だから実現できる、新たなモノづくりの形を創出し、お客様と共に育てていきたいと考えています。

また弊社はセイコーエプソングループの一員となりました。例えばロボットやセンサー、生産技術などとのコラボレーションにより、幅の広い提案をしていきたいと考えています。